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鳥類画家・神戸宇孝のフィールドスコープ旅行記 連載第2回<移動の多い北海道。ATCが本領発揮!>

はじめに
スワロフスキー・オプティックのサイトをご覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。私は幼稚園の頃に野鳥観察に興味を持ち、野鳥図鑑を広げては、憧れの野鳥に会いに行くことを夢見ておりました。今、年間の多くの時間をバードウォッチングに費やすようになり、日本全国へ出かける日々です。そんな移動の多い私が最近手に入れた相棒「スワロフスキー・オプティック フィールドスコープATC」は、旅先で大活躍しています。その様子を紹介していくことで、皆さんにこのATCスコープの魅力を感じていただければ幸いです。

北海道へATCを持っていくメリットは?

今回は初秋の北海道東部へ向かいました。
羽田空港から飛行機で女満別空港へ行き、レンタカーで野鳥のスポットを巡ります。
滞在は5日間。関東ではまだ汗ばむ陽気もある10月上旬でしたが、この時期に道東では予想外に冷たい北風の吹くことがあるため、念のためフリースやダウン ブルゾンなどの防寒具も準備しました。衣類やコンパクトになる三脚は小型キャリーケースに入れましたが、光学機器はやはり手荷物で持っていくのが安心。小型ブリッジカメラ、EL8.5×42に加え、ATCはリュックの中で嵩張らないうえに軽量なので、大変便利です。

最初の訪問地の濤沸湖は、湖の西端がオホーツク海とつながっている汽水湖で、鳥の姿が多いうえに駐車場もしっかり確保されているので、道内外のバードウォッチャーから大変人気のある探鳥地の一つです。訪問時はやや上げ潮で、少しずつ鳥が遠のいていってしまう条件でしたが、40倍ズームで見える範囲の鳥の識別には困りませんでした。

遠浅の湖には、たくさんの鳥たちがやってきます。この日も水鳥がたくさん観察できました

久しぶりにアオアシシギに会えた!

近年、野鳥観察を楽しむ人たちの間では、シギやチドリの個体数減少が頻繁に話題になります。私が鳥を見始めた40年ほど前は自宅付近の休耕田でたくさん見られたアオアシシギも残念ながら非常に少なくなりました。実は今回北海道に来る前にも関東で探したのですが、私の探した地域では会えず、今秋にアオアシシギに会うことは諦めていたところでしたが、今回濤沸湖で久しぶりに会うことができました。写真では逆光で黒くシルエットに近い状態になってしまいましたが、ATCの明るいレンズのおかげで脚の色もしっかりと確認できました。

久しぶりに会えたアオアシシギ。このときは2羽だけでしたが、湖の奥へ250mほど飛んでいくと10羽ほどの群れがいました。その姿もATCでバッチリでした。

次は海鳥探し!

アオアシシギの出会いに気分を良くした私は、視界が良好なのを良いことに欲張って海鳥探しにも挑戦しました。知床半島ウトロの街へ入る前にある オシンコシンの滝 駐車場 に車を止めて、歩道から海を見つめてみました。

コクドウ沿いの歩道からATCで海鳥を探す

一見何もいないように見えたオホーツク海ですが、ウミウとヒメウがすぐに頻繁に飛んでいるのがわかりました。また、そのウの飛翔をATCで追っていると、その沖合にウより羽ばたきが速い黒い鳥が飛んでいるのがわかりました。主にクロガモでしたが、時々そのクロガモの群れに翼の一部が白く見えるものが混じっていました。模様のパターンからビロードキンクロであることがわかりました。残念ながら私のブリッジカメラでは撮影してもその様子はわかりませんが、ATCではそれが見えたことに感動しました。写真に残すことも鳥との出会いの喜びではありますが、やはり自分の記憶にしっかり残ることが私にはこの上ない幸せです。

クロガモの群れに混じるビロードキンクロ(後方2羽)。前を飛ぶクロガモよりも体が大きいことで違いに気づくことができました。

海鳥を陸から探すコツは、海面から10mくらいまでの高さの場所から海を眺めることです。海鳥は直線的な飛行をするものがほとんどですが、その飛行の中で高度をよく変えるので、時々水平線から上を飛翔するように観察でき、発見がしやすいのです。さらに多少の波のうねりがあっても鳥の姿を見続けることができる海水面から6~7メートルの高さに視点がなるような場所がベストです。
1時間半ほどの観察で、沖合のかなり遠いところでしたがミツユビカモメやトウゾクカモメ類(種まではわからず)、フルマカモメ、ウトウを見つけることができました。レンタカーで移動距離の長い北海道の旅なので、この日はオシンコシンの滝での観察の後は宿へ行きました。

オシンコシンの滝 駐車場前の歩道からの観察は、水平線からの高さが抜群。今後は訪問時に必ず時間を確保したいと思います。ズームは最初17倍に設定、鳥の姿を見つけたら適した倍率に変えていくのが良かったです。

翌日は雨の野付半島

翌日は朝から重い雲が立ち込めていました。急な雨も予報も出ていたので、野付半島を訪問しました。砂州が海に伸びていくこの半島の数カ所には駐車場があり、天候が悪くなってもすぐに避難できる素晴らしい野鳥観察スポットです。
駐車場に到着してすぐ、フィー、フィーと悲しげな声で聞こえてきたので、波間にクロガモの群れを早速発見しました。曇り空の光量が厳しい条件でも、黒い体に嘴の根元の黄色が非常に目立つ、私の好きな鳥の特徴をしっかり観察できて嬉しかったです。

沖合を眺めて見つけたクロガモ。じっとしていたら少しずつ岸のほうへ近づいてきました。

運よく雨も止み

野付ネイチャーセンターに到着し、休憩をした後に外に出ると雨が止んでいました。これはラッキーです。ATCの軽い望遠鏡があるので、せっかくですから外を歩きたくなりました。するとすぐにカモメの群れを発見。関東ではこの時期にはウミネコがほとんどですが、ここは北海道です。きちんと種を確認する必要があります。
背中が濃灰色のオオセグロカモメを両側に翼の先端が真っ白なカモメがいました。シロカモメです。関東ではカモメがたくさんやってくる千葉県銚子市ではよく見かけますが、銚子以南になるとなかなか見られない鳥です。双眼鏡だけではやはり識別が難しかった距離でしたので、望遠鏡がある喜びを感じました。

翼の先端が白いシロカモメ。背中の灰色もオオセグロカモメ(中央2羽)よりも淡いのが特徴。

干潟にシギチドリの群れ

カモメの群れを見ていたら、その背後を何か鳥の群れが通過をしていくので、慌てて双眼鏡に切り替えて群れを追うと、シギ類のシルエットでした。砂丘を越えて湾側の干潟に舞い降りました

曇り空の下の遠くのシギの仲間は識別が大変

ATCのレンズの明るさに感謝

舞い降りたシギまでの距離は遠いですが、ATCの倍率を最大の40倍にして確認しました。久しぶりに群れで見ることができたオバシギ!やりました!しかも、その群れに背中の色が灰色に見えるコオバシギが混じっているのもわかりました。十分な明るさが確保されているからこそ、わかったこと。こういう充実感があると、私はいつも望遠鏡に感謝の意味を込めて、撫でてしまいます。
最終的にはかなり岸に寄ってきたので、双眼鏡でもコオバシギとオバシギの存在がわかるような状況にはなったのですが、先に望遠鏡で識別できていたので、落ち着いて観察ができました。

かなり岸まで寄ってきたオバシギとコオバシギ。越冬地の一つがオーストラリアであるこの2種は、10月上旬に北海道にいて大丈夫?とちょっと心配になりましたが、大丈夫なのでしょう(と信じながら観察…)

翌日はカラッと晴れて、フレペの滝へ

私は北海道に何度も来ていますが、訪問時にいつも立ち寄る場所に、フレペの滝があります。知床半島北側の知床自然センターから整備された遊歩道があり、森の中を通った先に草原と海が広がる場所で、いろんな鳥が観察できるお気に入りの場所です。

鳥だけではなく、景色も楽しめるフレペの滝展望台付近。私のお気に入りの場所の一つです。

カワラヒワの大群が

この日のフレペの滝で耳を澄ますと、潮騒に混じって小鳥たちの声が空から降ってきました。声の方向を見ると、カワラヒワの群れが通過していきます。季節柄、群れで移動していく鳥は、渡りの可能性が高そうです。

頭上を通過していくカワラヒワ。100-200羽の大きな群れも見られました。

シメも渡っていく!

写真には撮れませんでしたが、少しタヒバリやヒバリにも動きがあり、しばらくするとシメの群れがやってきて、私の頭上を越えていきました。私の住む関東では冬鳥ですので、「シーッ」や「ツィー」と聞こえる鋭い声を半年ほど聞いていなくて、最初はシメとすぐにはわからず判別に少し時間がかかってしまいました。

写真では小さくなって申し訳ないのですが、羽ばたいたときに翼に見える線や尾羽の長さの違いによってシメと識別できます。

小鳥の動きがピタッと…

カワラヒワやシメなどの群れが通過して楽しい時間でしたが、しばらくしてピタッと止んでしまいました。単に群れが途絶えたというのはあまりにも急な出来事で、不思議に思ってATCで周囲を探ると崖にハヤブサが止まっていました。小鳥たちはハヤブサの存在に早く気づいていたのですね。

ハヤブサがやってきていました

ハヤブサのいた崖の様子。左側の崖の中ほどにいます。

翌日もフレペの滝へ

でも、風が海から吹いていたのが良かったのか、オジロワシの飛翔をたくさん見ることができました。大きな翼を広げて風を利用し、ほとんど羽ばたかずに飛ぶオジロワシが滑るように流れていく様子は何度見ても感動です 。

写真では真っ黒になってしまっていますが、このオジロワシは嘴の先がまだ黒っぽく、若い個体でした。

最後にはクマタカ出現!

にわかに森の中がカラスの声で騒がしくなり、何事かと思って双眼鏡で周囲を見渡すと、クマタカがカラスに攻撃されていました。このクマタカも目の周囲が少し白っぽかったので、まだ若い個体のようでした。カラスの攻撃をうまくかわしながら、森の中に消えて行きました。それにしても、波や船の航行音など、海の音を聞きながらクマタカを見られるのは、普段山間部でクマタカを見る私にとっては不思議なこと。でも、これが知床のクマタカなのですね。

カラスよりも体が大きいので、本気になればクマタカのほうが強いのでしょうけれど、狩りのモードでないときは退散というのは、自然の中に生きる命が全てフェアな関係のように思えて、私は嬉しくなります 。

また道東へ来たい!

いろんな鳥との出会いがあった今回の道東訪問でした。環境ポテンシャルがとても高い北海道ですので、きっとどの場所でも様々な鳥との出会いがあると思いますが、私はフレペの滝での渡り鳥の動きが興味深く、再度訪問したいと思いました。来年も道東に来られるように、しっかり健康管理をしていきたいと思います。

ATCと共に大活躍してくれた私のEL8.5×42(初代型)。来年も同じショットを撮れることを祈っています!


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