記事

鳥類画家・神戸宇孝のフィールドスコープ旅行記 連載第4回<電車で出かけるバードウォッチング>

はじめに
スワロフスキー・オプティックのサイトをご覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。私は幼稚園の頃に野鳥観察に興味を持ち、野鳥図鑑を広げては、憧れの野鳥に会いに行くことを夢見ておりました。今、年間の多くの時間をバードウォッチングに費やすようになり、日本全国へ出かける日々です。そんな移動の多い私が最近手に入れた相棒「スワロフスキー・オプティック フィールドスコープATC」は、旅先で大活躍しています。その様子を紹介していくことで、皆さんにこのATCスコープの魅力を感じていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

連載4<電車で出かけるバードウォッチング>

コンパクトなATC/STC

近年は気候変動の影響からか、いわゆる春の期間が短くなっているように感じることも多く、木々の葉が伸びるのも早くなっている印象を受けます。特に山野の飛来する夏鳥の観察は難しさが増しているように感じます。そこで、2025年5月14日にサギの仲間のササゴイが飛来を観察しに浮間公園を訪ねました。東京のベッドタウンを行き来する電車に乗るので、小型のスワロフスキー・オプティック ATC/STCは、荷物を軽量コンパクトにできるので重宝です。

東京都板橋区にある浮間公園。JR埼京線の浮間船渡駅から徒歩数分で到着するアクセスが抜群のスポット。

オナガの声に誘われて樹林の中へ

事前に「ササゴイを観察するなら池の西側からが良いよ」という情報をいただいていたのですが、公園到着直後に池の東側の樹林から「ゲーィ、キュイキュイキュイ」というオナガの声がしたので、まずはそれを探しに行きました。

池の東側に続く樹林帯。日差しが強い日だったので、木陰が涼しくて快適!


オナガはカラスの仲間で、群れで生活していますので、名前の通り、尾が長いのが特徴です。日本では関東を中心に分布する鳥ですが、行動範囲が広いのか、「いる」と言われている場所でも行けば必ず会えるというわけでもない不思議な鳥。
樹間を飛び回る5-6羽のオナガの姿は見つけられましたが、木々の葉の陰でなかなか姿が見えにくかったのですが、そのうちの1羽が割と近くの枝にやってきました。右脚で何かを押さえつけて食べていました。

頭の黒と翼の空色がとても美しいオナガ。主に濁った声を出しますが、時々「クゥーィ」という可愛らしい声も。


ササゴイ、なんと不在!?

オナガの観察後に池の西側へ行き、ササゴイを探しました。池の中にある島によくいるというので双眼鏡で探しましたが、姿が見当たらないので、持ってきたATCで詳しく確認。それでも見つけられず、今日はお留守なのかとちょっと不安になり始めました。

池の中の島まではおよそ40-50m。詳しくササゴイを探すには望遠鏡が必要な距離。

島の岸辺や樹冠部などをATCでかなりじっくりと見ましたが、やはり発見できません。ため息が出てしまいましたが、バンやカイツブリといった水面を泳ぐ鳥が次々と出現したので、まずはそれを観察しました。

首を振って泳ぐクイナの仲間バン

ケレケレケレという大きな声で存在に気がつくことが多いカイツブリ


ササゴイ、現る!

バンとカイツブリを交互に観察していると、フワフワと羽ばたく鳥が望遠鏡の視野内を通過したので、それを追うと島の中の木に止まりました。目で追った時の羽ばたきのリズムからササゴイであることは間違いなさそうです。

止まった時に肉眼での見え方(矢印付近にササゴイがいます)

早速ATCで確認すると、やはりササゴイでした。成鳥よりも小さく、口角から後ろに伸びる黒線が特徴的です。

第一発見のササゴイ(600mm撮影でさらにトリミング)


ササゴイの視線の先には…

ササゴイは、日本では夏鳥で4月頃から水辺で見られます。コロニーと呼ばれる、数番から十数番が集まって繁殖するため、1羽いれば普通であればその周囲にもササゴイが見られるはずです。そう思って、改めて周囲をATCの倍率を上げて見直すと、先ほど見つけたササゴイの視線に先に巣を構えるササゴイのカップルを発見しました!

2羽で巣にいる姿

望遠鏡で観察を続けると、営巣中の個体は抱卵を開始しました。私が持ってきたブリッジカメラの600mmレンズで綺麗に撮れない環境でしたが、ATCはスマホで撮影できるアダプター(別売)があるので、それを使用すれば良い写真が撮れるのではないでしょうか。私は登山や電源確保がしにくい環境へ行くこともあるためバッテリーが持つガラケータイプを現在も使用中ですが、もしスマホに変更の際にはぜひ試してみたいと思います。

可変式スマートフォン撮影アダプターVPA2

試しに、無理やりですが600mmカメラとATCとの光軸を合わせて写真を撮ってみました。


時々島の水辺に出てくるササゴイ

椅子に座ってのんびりと観察していると、時々島の水辺を歩いているササゴイを見ることができました。どうやら巣材用に落枝を探していたようです。

水辺を歩くササゴイ。バンもこの島の周囲をよく泳いでいました。


アオサギも繁殖するかも?

着当初から島の中でじっとしていたアオサギをよく見ると、翼をやや広げて立っているようで実は脚を曲げています。普段はあまり見ないこの体勢で、何をしているのだろうと望遠鏡で見てみることにしました。

いわゆる直立はしていないアオサギ。いったいなぜ?

しばらくATCで見ていると、アオサギは小枝を自分の周りに集め始めました。ササゴイに刺激を受けたのでしょうか、なんとなく巣を作ろうとしているような、そんな印象を受けました。

立ち上がって枝をくわえて自分の方へ寄せる行動を続けるアオサギ。しかし、分岐している枝だったりしてうまく組めない。

満足げな顔をしていますが、もう少し枝の組み方を学ぶ必要がありそうです。


17〜40倍というズームの有効性

最近、スケッチに行くときはATCを持っていくことが多いのですが、スケッチ画材に加えて観察道具を持っていくために荷物をできるだけコンパクトにしたいことに加え、それは17〜40倍というズームの有効性が、とても影響しています。特に繁殖期の野鳥観察は鳥を警戒させないように距離を保つ必要があり、高倍率のレンズが欲しいこともしばしばです。
今回のササゴイ観察では、まずササゴイを望遠鏡で捉えるために17倍で探してから40倍でスケッチをする作業をしましたが、それがスムーズにできるために、鳥を探す→対象を捉える→スケッチを開始する という一連の流れをストレスフリーでできました。

ササゴイのスケッチ その1

視界が広いので、例えば抱卵中の個体を40倍で見ていても、周囲の枝の揺れに早く気づけて、これから抱卵の交代が始まりそうな雰囲気をいち早く察知でき、交代の様子のスケッチに備えることもできました。そんな余裕を持って観察とスケッチができたおかげで、個体の色差にも気がつくことができました。ひょっとしたらこの色の差で雌雄の見分けが今後できるようになるかもしれないと思えたのも収穫でした。

後から来た左の個体(やや頸の色に褐色があり、頭の藍色も光沢が少ない)が押し出すようにして抱卵を交代


ATCと一緒に野鳥観察した内容を4回に分けてお伝えしてきました。これまで小型でコンパクトな望遠鏡を選ぶと、明るさやシャープさはかなり妥協をすることになると先輩方に言われてきたのですが、長距離の旅でも、身近な場所でも、満足のいく観察ができるATCはその概念を変えてくれました。もし望遠鏡を「重いから」という理由で敬遠してきた方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ATC/STCを試していただきたいと思います。

事前予約をすればハクバ本社で各種スワロフスキー・オプティック製品をお試しいただけます。
ATC/STCに限らず、スワロフスキー・オプティック製品にご興味があれば、ぜひ一度ご訪問ください。



関連記事

ページ上部へ戻る